遺言書には署名・押印が必要となりますが、どんな遺言書であっても実印を可能な限り使用すべきです。

自分の希望通りに遺産を分配したい、相続争いを起こしたくない、法定相続人以外の人にも遺産を分けたいといった場合に遺言書は作成するもの。

遺言書は下記の事項において法的拘束力を持つことになります。

  1. 法定相続分と異なる相続の指定・委託
  2. 遺産分割方法の指定・委託
  3. 相続人の廃除・取り消し
  4. 遺言執行者の指定・委託
  5. 子の認知
  6. 未成年の子の後見人の指定
  7. 遺贈、寄付、信託の設定
  8. 5年以内の遺産分割の禁止

実印を使わなかったという理由だけこれらの法的拘束力をで失いたくはないものです。

それでは、遺言の種類と作成方法について考えていきましょう。

遺言の種類

遺言書の種類は、基本的には自立証書遺言秘密証書遺言公正証書遺言普通方式遺言と呼ばれる3つ。

これに加えて、緊急時に作られる危急時遺言、遺言者が一般社会との交通が立たれる立場にある場合など隔絶地遺言など特別方式遺言がある。

普通方式遺言

自立証書遺言

遺言者が遺言書の全文、日付、名前を自筆で書いて、印鑑を押した遺言書のこと。

筆記具と紙さえあれば、いつでも作成可能。他の遺言書にくらべると費用もかからず、手続きも一番簡単。

メリットは、自分1人だけで作成できること。遺言内容を他人にに秘密にしておけること。

デメリットは、専門家が内容をチェックしていないため「法的要件不備のため無効」になることがあること。

紛失、偽造、隠蔽の心配があること。遺言の存在を遺族に知らせる方法を考えておく必要があることなど。

実印については必ずしも必要ではなく、認印でも構わないが、遺言書が本人の印なのかトラブルになった場合を考えると自立証書遺言にも可能な限り実印を使用するべきだと言える。

秘密証書遺言

遺言者が適当な用紙に記載(ワープロ・代筆でも可能)して、自署・押印した上で封印した遺言書のこと。

これを公証人役場に持ち込み、公証人および証人立会いのもとで保管を依頼します。

メリットは、遺言内容を誰にも知られずに済む。偽造、隠匿の防止になる。遺言書の存在を遺族にあきらかにできることなど。

デメリットは、遺言書の内容については専門家のチェックしてもらう訳ではないので法的不備で無効になる危険性もあること。

実印については、遺言者の特定と同一性の確認のために印鑑証明書の提出が必要となるため、秘密証書遺言には実印を使用することになります。

公正証書遺言

遺言者が公証人の前で、証人2人の立ち会いのもと遺言の内容を口伝えで告げて、それに基いて公証人が、遺言者の真意を正確に文章にまとめて、遺言を公正証書として作成したもの。

メリットは、作成、保管を専門家である公証人がすべてやってくれるので法的に最も安全で確実なこと。後日、トラブルが起こっても紛争防止効果が高い一番望ましい方法と言える。

デメリットは、一人ではできないこと。費用がかかること。証人の立会が必要となることから遺言内容を秘密にしておくことができないことなどがあげられる。

実印については、遺言者の特定と同一性の確認のために印鑑証明書の提出が必要となるため、公正証書遺言には実印を使用することになります。

特別方式遺言

危急時遺言

急病・病状悪化などで突如として死期が迫り、遺言を残したいが、自分で遺言を書く力も残っていない、公証人を呼んでいる時間がない場合などに作成する遺言書。

証人3人以上の立会のもと、その1人に遺言を口授して受けた証人が筆記して作成する。

口授を受けた証人が、筆記した内容を遺言者および他の証人に読み聞かせるか閲覧させる。

各証人が、筆記内容が正確であるか確認した後、遺言書に署名・押印する。

遺言者が自ら署名・押印ができない場合に許される例外的な遺言なので遺言者の実印はなくても作成できます。

遺言者が普通方式で遺言できるようになって6ヶ月間生存した場合は無効となる。

隔絶地遺言

遺言者が、伝染病、交通手段が遮断された状態、長期間にわたる船舶乗船などで、一般社会との交通が断たれたために普通方式による遺言ができない場合に認められる遺言書。

遺言は遺言者が作成する必要があり、家庭裁判所の確認は不要。

伝染病隔離者遺言の場合は、警察官1人および証人1人以上の立会が必要となり、遺言者、筆者、警察官および証人が署名・押印する。

在船者遺言の場合は、船長または事務員1人および証人2人以上の立会が必要となり、遺言者、筆者、立会人および証人が署名・押印する。

遺言者が自ら署名・押印ができない場合に許される例外的な遺言なので遺言者の実印はなくても作成できます。

いすれも、遺言者が普通方式で遺言できるようになって6ヶ月間生存した場合は無効となる。

まとめ

家族間のトラブルを未然に防ぐために作成する遺言書。でも、実印を使用していなかった。

たったそれだけの理由で、法的不備を指摘されて、自分の意志とは違った相続がなされて、何十年と仲良く過ごしてきた兄弟や親族が憎みあい、仲違いしてしまう悲劇は避けたいところです。

あなたが、亡くなってからでは後悔しようにも出来ません。遺言書を残すなら可能な限り実印を使用した方が良いといえます。もし今、実印をお持ちでない、古くなって欠けやヒビがあるなら、この機会に新しく作成されてみてはいかがでしょうか。

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